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Brave GNU Worldのまた別な号へようこそ。幸い、 pyDDR熱にかかった読者はそれほど多くなかったようで、 「コラムのせいで筋肉痛だ」という苦情は少なかったです。
純粋な利用者の場合は特にそうですが、 Free Softwareであるオペレーティング・システム利用者の多くにとって、 こんな状況が、おそらく一番やっかいなものです。新品のハードウェアの組立てや、 据付けがぱっぱと済んだのに、同梱のドライバはWindows専用。
ハードウェアを買う前にインターネット調査に十分時間をとったり、 どのハードウェアを買うべきかという情報に基づいた決断ができていたり、 などということがなければ、まっとうなドライバを見つけるのに、 貴重な時間を費やすことになります。最悪な場合、そのハードウェアは、 全然サポートされていない、ということが判明するハメになります。 一部のドライバの開発中断、維持管理のされてないリンク、カビの生えた情報などが、 その状況をさらに悪化させています。
これは、厳密にいえば、Windows独占市場の外でのハードウェア販売を気にかけず、 独占市場の外にいる顧客のことをまじめに考えないハードウェア・ベンダーのせいです。
実際は、ハードウェア・ベンダー全部が、 ドライバを独自に開発する必要があるわけではありません。たいていは、 自分の興味にしたがって、ドライバ開発の手伝いをしてくれるボランティアが、 いるものです。しかし、多くの場合、そういう開発者は、 限られた支援しか得られないものです。なお悪いことに、 一部のハードウェア・ベンダーにいたっては、潜在的な市場の拡大を目論み、 あからさまに自分自身を守ろうとしています。
Of course there are also more and more exceptions to that rule, some hardware vendors are beginning to understand the potential of the Free Software market and either try to provide drivers themselves or further their development. Right now these are more or less exceptions confirming the rule, however. But drivers written and distributed exclusively by hardware vendors are really only the second best solution.
もちろん、これには例外がたくさんあり、一部のハードウェア・ベンダーは、 Free Software市場の潜在性を理解し始めており、 独自にドライバを提供しようとしたり、開発を促進しようとしたりしています。 とはいえ、これらは現在、多かれ少なかれ習慣を認めたうえでの例外です。 しかし、ハードウェア・ベンダーにより、ドライバが排他的に書かれたり、 配布されたりすることは、本当は最高から二番目の解決策にすぎません。
それよりよいのは、ベンダーが、興味をもっている会社やボランティアとともに、 ドライバを開発したり保守したりするプラットホームでしょう。これは、 生産中止の何年も後に、ドライバが保守され続けるよう支援するのみならず、 相乗効果を利用できるようにもします。
さまざまなハードウェア・ベンダーによるボードの多くが、 同じチップセットを使っています。この場合、作業の多くを省くことができます。 複数のOS用のドライバを開発したり、 新しいハードウェアやソフトウェア・プラットホームへの移植を許したりすること、 つまり、新しい市場の創出も、可能になるわけです。
こういった過程へのハードウェア・ベンダーの積極的な参入は、ここ一〜二年、 突然サポートの打ち切られることがない、 という確信に基づいた高い顧客維持力とともに、ハードウェアの可用性を高めます。 潜在的な市場の成長については、いわずもがなでしょう。
このようなシステムのポータルは、既存のドライバと、その状態を知るために、 ベンダー製品の検索ができるデータベースであるべきです。つまり、 ドライバの有無や、たとえばそれが安定しているかどうか、単に開発者向けかどうか、 身寄りがなくなったり時代遅れだったりするかどうかが、利用者に直接、 わかるわけです。
フランスのFlorian Duraffourgが、 そういったデータベースの構築を呼びかけています。
Florian Duraffourgは、PHP、HTML、MySQLを用い、GNU/Linuxと、 GNU/HURD専用のドライバ・データベース [5] の作成を目標にしています。 ドライバを探している人は誰でも、ドライバの有無や、 その状態を知ることができます。
単にウェブをアクセスすれば、店頭のハードウェアを買う前に、 どれだけちゃんとサポートされているか、直接しらべることができます。 Florianは、サーバーへの直接アクセスができるような検討もしていて、 もしそうなれば、HTMLや、ブラウザぬきで、 データベースへのアクセスが可能になるでしょう。たとえば、PDAや、 携帯電話のような無線装置で、単純なクライアント・プログラムです。
このプログラムの計画や思索は、いまだ開発段階にあり、Florianは、 最終的ドメーンや、専用のサーバーをまだ持てずにいます。彼の考察の中には、 情報の喪失や、リンク落ちを鈍化させるため、 専用FTPサーバー上の全ドライバのミラーも入っています。
現在、彼にとって最大の関心事は、ドライバ・データベースの収集、 他言語への文献翻訳、ウェブサイトの設計、 開発に貢献してくれるボランティアの募集です。
これは非常に便利なプロジェクトに思えますし、 多くのボランティアがこの取組に参加することを、私は期待しています。また、 幸いにも一部のハードウェア・ベンダーも、うまくいけばこの機会を認識し、 プロジェクトを直接サポートするようです。
Free Softwareの周辺でのビジネス・モデルを見つけることに興味のある人たちは、 この分野に興味深い好機が現われたことに気づいてしかるべきでした。
もし販売店や通販ビジネスが、戦略的に、GNU/Linuxのような、 Free Softwareでサポートされているハードウェアに焦点を合わせるならば、 この付加価値は、大多数の人々に間違いなく大きなものとなるでしょう。
サポート不足を心配することなく、自分の欲しいだけ買物をすることができる、 ということを顧客は知るはずです。 自分の買ったハードウェアのちゃんとしたドライバのあるCDを、 一種の追加サービスとして、手に入れることも可能なはずでしょう。
顧客維持力のせいで、ハード・ディスク、筐体、CPU、メモリーのような、 サポートにかんして通常、決定的ではない他のハードウェアも、 同じ会社から購入する見込みがでます。つまり、上記のプロジェクトのサポートで、 販売指向のビジネスも相当な付加価値を得る可能性があるわけです。
Gilles DebunneによるlibQGLViewer [6] プロジェクトでは、 3Dアプリケーションをより容易に、 早く開発できる3Dビューアー・ライブラリーを作成しました。
Gillesによれば、単純な座標系―古典的でおなじみではありますが― が、標準的3Dライブラリーの一部として、まれにしか含まれないことが、 動画のカメラやスナップショットといったツールのような、 3Dアプリケーション開発の主問題でした。GLUTでさえ、 かなり低い抽象レベルを用いています。
それにくらべ、libQGLViewerは、3Dの台本どおりにマウスで自由に動かせる対象物と、 写真機を提供します。ベクトル・ベースのEPSを含むさまざまな形式で、 スナップショットの保存もできます。
このプロジェクトは、QtライブラリーのQGLWidgetクラスを基にしつつ、 リフレッシュ率を示すという目的だけのために、まだGLUTを使っています。 しかし、Qt 3.1への移行で、この依存関係はなくなることでしょう。 libQGLViewer自体は、(Qtライブラリー同様) C++で書いてあります。
この作者は、グラフィックスの研究所で働いており、 そこでは誰でも一度は3Dビューアーを作っていたのです。 解決策にはそれぞれに強みがあり、完璧なものはありませんでした。Gillesは、 そこをなんとかしたかったのです。また、彼は、学生を教えてもおり、 インフラに長い時間を割く必要ぬきで、 もっと簡単に学生を創造的にさせることのできる方法を、さがしていました。
そこでGillesは、このプロジェクトを始めました。彼は当初、 一週間の作業を見込んでいましたが、結局、 フルタイムで1年のプロジェクトになりました。今では、 プロジェクトは完成したと思っていますが、文書については、 英語を母語にする人からの推敲が、まだ必要です。 また、インストール手順についてのフィードバックも歓迎です。
ところで、プロジェクトの完成宣言とは、敏感な決定です。彼の宣言した目標は、 特定のアプリケーションに焦点を合わせずに、 ビューアーをできるだけ一般的に保つことでした。この境界は越えた、 とGillesは確信し、大きな新機能は追加しないことに決めました。
作者によれば、このプロジェクトでもっとも重要な特長は、きれいで、移植性があり、 注意深く設計されたAPIで、このライブラリーには、完結した文書と、 コメントつきの例がたくさんついています。そのため、 単純な3Dビューアーであれば、コード10行で1分以内に、生成できます。
Gillesは、libQGLViewerが何でないか強調しようとしています。これは、 3Dレンダリングをしません。その唯一の目的は、ビューアーの提供だからです。 つまり、利用者が責任を負う「draw()」メソッドが用意されていて、 台本を生成する可能性は、たくさんあります。libQGLViewerでは、 利用者がそういった台本を入れて動かすことが、できるようにしてあるのです。
libQGLViewerは、GNU General Public License (GPL) の下でのFree Softwareとして、 公開されています。独占的なアプリケーションも使えるよう、 これをLesser General Public License (LGPL) にかえてくれ、 という要求は、明らかに数多くあります。ですがGillesは、 個人的かつ政治的理由により、 libQGLViewerをGPLの下で公開し続けることに決めています。
彼はまた、許諾についての一般的に入手可能な情報をみつけ、許諾の潜在的な変更や、 多重許諾が、非互換であり、往々にしてまぎらわしいことを知りました。 そういうふうに感じているのは、おそらく彼だけではなく、その背景について、 ちょっとした入門編を書くのが有用かもしれません。
許諾が理解できるようにするには、それがつくられた背景について理解することが、 手がかりになります。GNU General Public License (GPL) のような許諾は、 Copyright-licenses、またはAuthorship right ("Droit d'Auteur") licenses (著作権許諾) です。CopyrightとDroit d'Auteurは、実際目的上、 ほとんど同じですが、歴史的には、違いがあります。
これを理解するには、Copyrightがグーテンベルク時代の発明、すなわち、 1476年ごろのプレス印刷の発明の結果であることを知る必要があります。 当初は、出版者の純粋な独占のためにあり、 著作者の労作についての権利を与えることを意図したものではありませんでした。 1710年になって初めて、著作者が自分の労作の権利を買い取ることができました。
今日のDroit d'Auteurの核となる、 自分の労作にかんする著作者の基本的な権利という考えは、大部分が、 フランス革命前のフランスや、ドイツの哲学者から伝わったもので、 フランス革命の主な業績として、初めて実現されました。
こうして、新しい法習慣として、古い、出版者の独占指向体系と入れ替えるため、 Droit d'Auteurが制定されました。今日、基本的には、ヨーロッパ大陸の国ぐにでは、 Droit d'Auteurの習慣にしたがい、英米圏では、 いまだにCopyrightの習慣にしたがっています。
国際的な共通点を形成するため、締結されたベルンや、 ストックホルムの名前で呼ばれる、調和手続きや、合意があります (訳注: ベルヌ条約の締結は、ベルン)。このため、基本は大きく異なるものの、 ほとんどのことがらは、事実上、違いがありません。例外がひとつあります。
Copyrightの反対に、Droit d'Auteurは、(他の人権のような) 著作者の人格権が譲渡不可能であることをみとめます。契約にどうあろうとも、 著作者の人格権は、制限できません。実際、(一見、あるいは本当に) そうしようとする契約は、法廷で無効と宣言される危険をおかしているわけです。
いわゆる利己的権利だけが、譲渡可能です。単一の、排他的な利己的権利があります、 排他的な利己的権利の所有者は、無制限の単一利己的権利を提供でき、 法廷で自分の権利を主張することができます。排他的な利己的権利は、 英米のCopyrightと同様に、ほとんど実践的な目的のためにあります。
そこで、これら排他的な利己的権利や、Copyrightに基づき、これらの権利者は、 ソフトウェアの配布される条件となる許諾を択一することができるのです。 Free Softwareの場合、Free Softwareの許諾 [7] を択一する、ということになります。
Copyrightや、排他的な利己的権利の持ち主は、無制限な数の単一な、 利己的権利を (また、したがって許諾を) 発行でき、もちろん、 複数の許諾群の下で同一のソフトウェアを発行することができます。 これらの許諾が、Free Softwareの許諾であるのか、独占的なそれであるかのは、 法的な差異をもちません。
もし、たとえば、ソフトウェアの一部が複数の著作者をもつために、 排他的な利己的権利が複数の人びとにあり、 ひとりの受託者に権利を統合しないことを選択したときは、もちろん全著作者が、 許諾に合意する必要があります。
そこで許諾は、排他的な利己的権利という方法でもって、(多かれ少なかれ、 英米のCopyrightと同様に) 単一の利己的権利として、与えられます。
自分の排他的な利己的権利の持ち主だけが、法廷で許諾を主張もできることが、 理解できるでしょう。また、あるプロジェクトに取り組む著作者が多数にわたる場合、 再許諾は、事実上、不可能になります。
この理由のため、Brave GNU World第48号 [8] で示したとおり、FSF Europeは、 2003年2月に、Fiduciary Licence Agreement (FLA) [9] を刊行しました。
FLAの刊行への反響として、ここでさらっととりあげるべき質問が、若干、出ました。
何度か出た質問は、FLAが、GPLと入替えになるのか、というものです。これは、 もちろん違います。なぜならば、GPLは、Copyrightを基にしたひとつの許諾で、 排他的な利己的権利という手段で与えられますが、その一方、FLAは、 排他的な利己的権利の転送を取り扱うもので、 許諾のひとつ手前のことがらになるからです。
もうひとつの質問は、FLAでは、無制限の、単一な利己的権利を、 現著作者に再転送するために、指名者が重許諾する (dual-licensing) 可能性を残したままにしてあることについてのものです。ここで出された質問とは、 この場合、著作者はすでに排他的な利己的権利の保持者でないため、 法廷でこれらの許諾を強制できるのかどうか、というものです。
もしこの場合を想像すると、著作者の甲が、自分の権利をFSF Europeに委譲し、 そして、第三者へソフトウェアと許諾を渡さない、という契約条項で、単一の、 独占的な許諾を、会社乙に与えた場合です。今、会社丙が、 著作者甲のソフトウェアを、言うまでもなく独占的に、販売したとします。 これはどういうことになるのでしょうか?
論理的には、ふたつの可能性があります。ふつう、このソフトウェアは、 FSF Europeにより、GNU General Public Licenseの下で、刊行されるでしょうから、 第一の可能性は、ソフトウェアの独占により、会社丙がGPLに違反した、 ということです。もちろん、FSF Europeは、これを取り調べることでしょう。 会社丙が、GPL版をとったのではなく、会社乙の独占版をとったのだ、 という証拠の書面を提出したときだけ、容疑が晴れるでしょう。
しかしこの場合、会社乙は、著作者甲との契約に、違反したことになります。そして、 もちろん、著作者には、契約違反にたいする法的処置をとる権利が、まだあります。 というわけで、著作者は、法的処置をとり、 会社乙からきた権利の転送の鎖を断つことができます。
もちろん、私は、これが常に疑いなく、認定を受け、 十分な経験ある法律家による検査を要し、自分にはその資格がない、ということを、 あからさまに宣言する必要があります。ですが、ことがらを省略し過ぎたりして、 法律の専門家をいらいらさせることなく、法律家ではない人たちに、 全体像を伝えることには成功した、と期待しています。
今月はここまで。いつもどおり、たくさんのご提案、ご質問、コメント、そして、 新しい開発や、興味深いプロジェクトのお知らせを、いつものアドレス [1] でお待ちしています。
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Copyright (C) 2003 Georg C. F. Greve日本語訳: 飯田義朗
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(著作権と上の許可告知のある限り、 この写しの逐語的な複製をとって、 配布する許可を認めます。)Last modified: Fri Jul 4 12:19:34 CEST 2003