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Brave GNU World - 第24号
Copyright © 2001 Georg C. F. Greve <greve@gnu.org>
日本語訳: IIDA Yosiaki <iida@brave-gnu-world.org>
許可声明は以下のとおり

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GeorgのBrave GNU World第24号へようこそ。 これでちょうど2周年になるわけで、もちろんそのことにもふれようと思います。 ですがその前に、興味深い今月号の話題がいくつかあります。

GNU Paint

Andy TaiによるGNU Paint (gpaint) [5] は、 xpaintプログラムをGTK+ツールキットとGNOMEライブラリーに移植したものです。 どちらかというとハイエンドのプログラムであるGIMP [6] とは、 わざと競争を避けています。 その代わりGNU Paintはかなり軽く、 初心者にとっても使い易くすることに注力しています。

GNU PaintとGNOMEとの高度な統合が将来、望まれています。 なぜならGNOMEデスクトップの拡張となるものの探求になるからです。 とある将来の計画に、gpaintをBonoboの構成要素にする、ということがあります。 そうすれば、gnumericといったGNOMEのアプリケーションで、 gpaintの機能が共有できるようになります。

公式GNU Projectであることから、 GNU PaintがGNU General Public Licenseの下で配布されていることは、 驚くに値しないでしょう。 さらなる開発についていえば、 国際化を拡張するため翻訳者からの援助をうけることをAndyは望んでいます。 それ以外の点では、このプログラム自体、かなり使えるものです。

Gnatsweb

Gerald Pfeiferは、 ウェブをベースにしたGNU Bug Tracking SystemへのフロントエンドであるGnatsweb [7] の新任管理者になりました。

GNU Bug Tracking Systemは、 もっとも頑丈で可用性のあるバグ追跡システムで、 世界中の会社やプロジェクトで使われています。 その機能は、開発者の直すバグを利用者が簡単に報告できるようにすることです。 基本機能の1つには、共同作業の調整があります。 開発者にとっては重複解決の危険が少なくなる一方、 利用者はエラーが既知や修正済みであるかも確かめられます。

GNATSの最後の安定版は1993年にリリースされ、 それ以降の公式開発は休止しています。 ですが今GNATSには新しい管理者としてMilan Zamzalがつきましたし、 新しい安定版をもうすぐ見られるだろうと期待できます。

2人の管理者とボランティア・グループの主問題は、 過去数年に作られたパッチの適用です。 たいてい問題というのはいつもあるものですが、 ノウハウの喪失は避けるべきであり、 Geraldはこの仕事に興味ある開発者をまだ探しています。

fcron

fcron [8] は、 "Vixie cron"や"anacron"といった、 よく広まったデーモンの代替を目標とするものです。 いわゆるcronデーモンの機能は、予定の時刻におけるプログラムの起動で、 システムの管理には基本的です。

このデーモンにより典型的には、 利用者の指定したプログラムをある時刻、日付、曜日に起動し、 終了時にはプログラムの結果をメールで利用者に送ることができます。 普通は「2時間ごと」とか「毎分」のような周期的時間の指定もサポートされています。

Thibault Godouetによるfcronは、数種の興味深いやりかたで拡張されています。 まず、システムの負荷、つまり、システムがどれくらい忙しいかにおうじて、 プログラムを起動するようにできます。 また、終了時に送るメールの受取人を指定する欄をサポートしています。 プログラムをうごかした利用者にメールを届ける必要はないのです。

さらにナイス値の欄があり、 プログラム優先度の値をじかに決めることができます。 また非常に興味深いのは、プログラムを起動する頻度を指定できる能力です。 これで 「1日のうち3:00から6:00まで『または』19:00から22:00までのどちらかの間に1回」 のような指定ができます。

特に常時稼働しているとはかぎらないコンピュータ用に、 普通の時間でではなく稼働中の時間での設定ができます。 たとえば、1日24時間のうち稼働中にプログラムを起動する、 と言うことができます。

構成ファイルをあいまいにするのを避けるよう、 複数行にまたがるエントリーも有効で、 並列起動を避けるため、 ジョブの直列化もできます。

fcronは今まだβテスト状態ですが、もうそこそこ安定しています。 当面の目標は、徹底的な試験と、安定版のリリースです。 特にさまざまな環境や情況での試験のため、 Thibaultはまだボランティアをさがしています。

Eukildes

Euklides [9] は、 GNU General Public License配下でのLaTeXの拡張で、 ユークリッド幾何作図用コマンド言語です。

Euklidesの作者のChristian Obrechtは、 彼自身のようなLaTeXを利用する数学教師を1番の対象においています。 が、学生や生徒全員もそこから恩恵を受けている、といえるでしょう。 euk2psという同梱のシェルスクリプトのおかげで、 カプセル化されたPostScriptファイルを作り、 直接Euklidesのコマンド群からghostviewで見ることができます。

DrGeoやKsegといった他のプログラムとくらべてEuklidesの長所は、 これが他のプログラムのようにWYSIWYGインターフェースにとらわれてはいない点です。 というのも、 幾何学図形の記述手法としてWYSIWYGが必ずしも最高とはいえないからです。 でもときにはGUIもとても便利なので、 GTK+ベースのフロントエンドの作成も計画中です。 利用者はこれで対話的に図形を変えることができるようになるはずです。

次のプロジェクトは、私のようにEMACSでメールを読む人には特に興味深いでしょう。

Etach

John M. Rulnickは、Etach [10] というEMACSの拡張を書きました。 これは、電子メールのMIME添付を簡単かつ快適に使うためのものです。

この分野でのプロジェクトはいくつかありますが、 Johnは本当にどれにも満足いきませんでした。 彼の第1の動機は、 メール作成時のMIME添付の追加や、 受信メールのMIME添付のディスクへの保存を、できるだけ簡単にすることでした。 Etachはこのため、 よく使う必要な仕事は簡単にできる一方、 自分の必要に合わせてカスタム化できる多重のオプションを提供するようにしています。

EtachはいくつものEMACSのバージョンでうごき、依存関係の制限がないので、 インストールは簡単です。 特にEMACS初心者がすすんでさわれるようになっている、といえます。

Etachの状態は「ほぼ完成」です。 提案についてJohnは寛大で、喜んで実装しますが、 自分自身はもう拡張を考えていません。 Etachは公式には「βリリース」ですが、ここ数か月間、バグは報告されていないので、 きっと「安定」と考えて差支えないでしょう。

GNU Serveez

GNU Serveez [11] は、 元々 Martin Grabmüller が書いて、 今ではRaimund JacobとStefan Jahnが管理しているサーバーフレームワークです。

GNU Serveezは、 接続指向の全プロトコル用のIPベースのサーバー群 (TCP、UDP、ICMP) や「名前つきパイプ」にむけたルーチンや補助をあたえます。 これは、 ネットワーク・プログラミングのさまざまな面を移植性のある方法で示し、 また、 Microsoft Windows (9x/ME/NT/2000) 同様、 GNU/Linuxや32または64ビットのUnixで動作すると伝えられています。 開発者によれば開発中の最もおかしな経験は、 Windowsシステムの一部での組込み制限とのこと。 たとえばWindows 95では、 システム全体で100本までのTCP接続しか張ることができません。

利用者はGNU Serveezで独自のサーバーを実装したり、 どのようにサーバーが動作するのかを理解するために使ったりできます。 GNU Serveezに含まれているサーバーが、その実例になっています。 含まれているサーバーにはたとえば、とても速くて構成の簡単なHTTPサーバー、 非常にきれいなIRCサーバーやGnutellaスパイダがあります。 GNU Serveezは、全面的にGNU General Public Licenseで保護されていますので、 自分のプロジェクトでルーチンを直接使うこともできます。

エキゾチックな趣味のある人には特に、GNU Serveezを見てみるべきでしょう。 たとえば非常にうまく動作するICMP上のTCPトンネルがありますし、 GNU Serveezに含まれている全プロトコルは単一のポートで動作します。

GNU Serveezから「普通」の利用者が恩恵を受けられるようにするには、 特に簡単な構成とインストールが開発者にとってずっと最大の課題でした。 (GNU Serveezを)ずっと稼働させまたこれをもっと改良することは、 今後の開発での高い位置を占めています。

他のプロジェクトで使ったり、 動的ロード・モジュールの力をかりてサーバーを拡張可能にしたりできるよう、 この機能をlibserveezライブラリーにまとめることが計画中です。 開発者は構成用言語をSchemeからGuileにすることも検討中です。

ローカル・ネットワークのオンライン/オフライン状態によって機能を変更するような、 構成の簡単なDNSサーバーを含む計画があると聞くと、 自宅でネットワークを組んでいる人には、 興味深いのではないでしょうか。

では、ここで私が非常に重要と考えているプロジェクトを紹介しようと思います。

GNU Enterprise

GNU General Public Licenseの下、 企業で普通に必要な業務の全分野を網羅することを目標に、 Derek A. NeighborsがGNU Enterprise [12] プロジェクトを始めました。

プロジェクトはモジュール状になっており、 若干のモジュールは「箱を開ける」だけで使える状態な一方、 他のモジュールは拡張やカスタム化ができるよう、同梱されています。 たとえばモジュールは「人材」(human resources)、「財務」(financials)、 「顧客関係管理(CRM)」(Customer Relationship Management)、 「企業資源企画(ERP)」(Enterprise Resource Planning)といった具合です。

現在の基本機能には、GNUエンジンのGNUe forms (訳注: ``form''は記入用紙や伝票のこと)、 アプリケーションサーバーのGEAS、 データ抽象化ライブラリーのlibGDAがあります。 報告書サーバーのGNUe reportsと 「企業業務統合(EAI)」 (Enterprise Application Integration) ツールのGNUe integratorは、 現在開発中です。 FAXや電子メールなどの通信エンジンのEWOKや、 業務フロー管理のGNUe Workflowといった他の部分は、計画段階です。 負荷分散のアイデアやトランザクション処理についての論議もあります。

このプロジェクトは元々、中小企業を対象にしていたのですが、 今ではあらゆる規模の企業が視野に入っています。 これが巨大なプロジェクトであることは明らかであり、そのことが問題でもあります。 現在、米国政府官庁、大学、一部のコンピュータ大会社の従業員、 ボランティアがたくさん、Derekとともに作業しています。

最高の移植性を達成するため、基盤はXMLにし、GNUeはUnix (GTK+やMotif)、Win32、Mac、Cursesやウェブでうごきます。 世界のあらゆる方面からきている開発者は忙しくしており、 完全な国際化はプロジェクトの主要目標のうちの1つです。

ただごとでないのは、 Free Softwareにたいしての基本的かつかなり意識的な志向性です。 Lesser GPLではなくGPLがかなり意識的に採用され、 開発者は自由を失うリスクより、むしろCORBAからの分離を模索しています。 プロジェクトが長続きするよう、活発な開発者は皆、 著作権をFree Software Foundationにあげているのも、 プロジェクトの原則です。

この分野では本質上、独占的な解にかぎられていたため、 長期的にこれは、Free Softwareを会社で確実にひろめる重要なプロジェクトです。

さて今月の最後の記事になりました。 私にとってはこれは個人的に大きな喜びです。

Brave GNU Worldの2年間

時の経つのは本当に早いもので、 信じがたいことにこの号のリリースでBrave GNU Worldも満2年になります。 書き始めたころ、 毎月長い間Free Softwareの話題でコラムをいっぱいにできるかどうか、 たっぷりした自信はありませんでした。 どうやらそれは可能だ、ということが証明されたみたいです。

単にいきながらえたというより、このコラムは成長しつつあります。 Lee Jong KeunとKi-Young Choiという2人の朝鮮語訳者が "Brave GNU World family" に加わり、これで6か国語になりました。 さらにこれは韓国の (訳注: 原文は北とも南とも明示はなく単に``Korean''。以下同) Linux-Magazine誌に印刷もされ、雑誌数は合わせて4誌 (ドイツのLinux-Magazin、 イギリス、フランスと韓国のLinux-Magazine) になりました。 これらはみな、校正者、訳者、スカウト、良助言者 (moral supporter) たちから私のうけた助力なしでは不可能でした。 これは私の記念であると同時に皆さんの記念であり、 皆さん1人ひとりに多大なる感謝の意を表したいと思います!

Brave GNU Worldは今後ともすすめていこうと思っています。 が、Free Software Foundation Europeでの作業のため、 私の時間にはかぎりがあります。

そのため、Brave GNU Worldのウェブ・ページ [3] を喜んで管理し、 真のウェブ・サイトへとゆっくり拡張しようというボランティアの人、 または小さなグループを私は探しているところです。 現在の最重要課題はページの管理であり、 デザインはまあまあだとはいえ、改良の余地はまだ十分あります。 たとえばOsvaldo La Rosaには、 視力障害者がもっと楽に読めるようなページにするためのアイデアがありました。 また私はある点で、 ウェブ・サイトを毎月コラムをだす真に対話的なフォーラムにしたいと思っていますし、 ある話題で選び抜かれたエッセーが公開されるような 「発言コーナー」(speakers corner)をずっと考えていました。 「We run GNU」運動のレイアウトや統合も再検討の必要があります。

もしあなたにとってそれが可能で、そうすることが楽しそうであれば、 どうか電子メール [1] をお送りください。

これはBrave GNU World最後の周年記念ではない、そう私は望んでいます。 間違いなく来月には続きます。 お考え、コメント、質問、興味深いプロジェクトや体験談は、 電子メール [1] にていつもどおり歓迎します。

情報
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[3] GeorgのBrave GNU Worldのホーム・ページ http://brave-gnu-world.org
[4] 「We run GNU」イニシアチブ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/rungnu/rungnu.ja.html
[5] GNU Paintホーム・ページ http://gpaint.sourceforge.net/
[6] GNU Image Manipulation Program (GIMP) ホーム・ページ http://www.gimp.org/
[7] GNATSホーム・ページ http://sources.redhat.com/gnats/
[8] fcronホーム・ページ http://fcron.free.fr/
[9] Euklidesホーム・ページ http://euklides.multimania.com/
[10] Etachホーム・ページ http://etach.sourceforge.net/
[11] GNU Serveezホーム・ページ http://www.textsure.net/~ela/serveez/
[12] GNU Enterpriseホーム・ページ http://www.gnue.org

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Japanese translation by IIDA Yosiaki

日本語訳: 飯田義朗

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Last modified: Mon Mar 19 21:04:44 CET 2001